全国60のクラブが加盟するサッカー・Jリーグと、アスリートの社会貢献などを支える日本財団が、気候変動対策に本腰を入れる。9日に「サステナビリティ領域における連携協定」を締結。持続可能な社会の実現に向け、スポーツを通じた取り組みを活性化させることを約束した。
- 脱炭素はメリット薄い? 日本人の気候意識、行動につなげるには
具体策の一つが、各クラブの気候変動対策への取り組み状況を可視化する「スポーツポジティブリーグ」(SPL)への参画だ。評価項目はクリーンエネルギーの活用、使い捨てプラスチックの削減・廃止など全部で12。イングランドのプレミアリーグでは2018年からSPLでの評価を続けているといい、Jリーグは26年1月に開始する。
60クラブの取り組みを数値化して順位をつける方針という。クラブ間の競争意識を刺激しながら、環境に優しいリーグをめざす狙いだ。
日本財団はこの活動に年3億7千万円を助成。1クラブにつき最大400万円を支給するという。財団の笹川順平専務理事は「試合の勝敗は重要な要素」とした上で、「地域コミュニティーへの責任を果たすことも大切。勝ち負けだけではないリーグがあってもいいのではないか」と意義を語った。
協定発表の記者会見に出席したアスリートたちも地球温暖化への危機感を口にした。
元サッカー日本代表でJリーグ特任理事を務める中村憲剛さんは、「温暖化はプレーに支障が出るレベルまで進んでいる。指導者目線でも、8月の練習は本当に危険。台風でJリーグが試合中止になったこともある」と話した。
雪山の環境保全活動に携わっているスキージャンプの高梨沙羅選手は、「私たちは雪がないと試合ができない。降雪機で試合をやることが多いが、機械を回せないくらい気温が高くなり試合がキャンセルになることもある」と紹介。「このままでは将来の子どもたちの活躍の場を奪ってしまう」と懸念を示した。
「温暖化は人類みんなの悩み。他人事ではなく、自分だったらどう動くかを考えて行動したい」と語ったのは、元ラグビー日本代表の五郎丸歩さん。競技やスポーツの垣根を越えて連帯していくことの重要性を訴えた。
Jリーグは連携協定を結ぶ前から、公式戦での温室効果ガス排出量の測定を行っている。辻井隆行執行役員は「30年には排出量を50%にしたい」とし、今回の協定が削減の後押しになることを期待した。